2015/06/08

Innovation 日本発、開発者ストーリー

TECHNOMELT EM384

ヘンケルでは毎年たくさんの製品を世界中の人に届けています。そんな新製品に関わる人々に、開発の裏側や込められた思いを聞く『イノベーション』。今回は、接着技術事業部門・工業用接着剤事業本部・製品開発本部のお二人に、バイオマス ホットメルト接着剤「TECHNOMELT EM384」について話していただきました。

TECHNOMELT EM384 とは

薄いフィルムを貼り合わせたり、プラスチック同士を接着させたりするものとして、ホットメルト接着剤というものがあります。ヘンケルでも多くのホットメルト接着剤を製造していますが、世界で初めて、バイオマスを使ったホットメルト接着剤が、このTECHNOMELT EM384です。2012 年に25%の植物由来成分を含むホットメルト接着剤が完成し、2014 年にはその含有量を66%まで高めている、環境にやさしい接着剤です。

石油資源の枯渇が懸念される中、世界で例の無い接着剤の開発

Q:バイオマス ホットメルト接着剤の開発は2010 年からスタートしましたが、どのような背景があったのですか。

▍早川:ホットメルト接着剤にはタッキファイヤー(粘着付与剤)という石油から作られる原料が主に使われているのですが、2010 年はタッキファイヤーの供給不足から原料が高騰し、調達に苦労しました。そこで、原料を減らすか、もしくは使うことなくホットメルト接着剤を作れないかと考えたのが一つ目の理由です。もう一つの理由は、世の中の環境意識の高まりです。1997 年の京都議定書以降、温室効果ガス排出量の削減が時代の要請となったこともあり、環境にやさしいホットメルト接着剤を作ろうというコンセプトで開発を始めました。

Q:それまではバイオマスを原料にしたホットメルト接着剤は作られていなかったのですか。

▍竹中:バイオマスプラスチックは2000 年代の初め頃からありましたが、バイオマス接着剤は、まだ研究段階のものがいくつかあるぐらいでした。特に、熱で温めた状態で被着体に貼り付けるホットメルト接着剤でバイオマスを原料としたものは市場になく、世界でも例がありませんでした。今後、石油資源が枯渇していく中で、持続的に使える植物系の原料で製品を作ることは、社会的にもインパクトがあると考えました。

石油系と植物系の材料を混ぜる技術を新たに発見

Q:植物系の原料を扱うことが初めてということで、開発は簡単ではなかったでしょうね。

▍早川:当初はバイオマスポリマーではなく、生分解性の「ポリ乳酸」というポリマーでホットメルト接着剤を作ろうとしていました。トウモロコシなどが「ポリ乳酸」の原料になっていて、アメリカではバイオマスプラスチックによく使われていたのですが、日本ではまだコストが高かったことなどから断念しました。その後、石油系の材料と植物系のバイオマスを混ぜる技術を竹中さんが新たに見つけたことで、植物由来のホットメルト接着剤の開発が実現しました。
通常、植物系の材料と石油系の材料は極性が異なり混ざり合いません。それを均一に混ぜるための添加剤(相溶化剤)を見つけたのです。これがバイオマスホットメルト接着剤を開発するためのキーテクノロジーとなりました。
▍竹中:従来の工程を複雑にすることなく、同じ工程で簡単に製造できる添加剤を探し出し、そのうえで混ぜ方も工夫しました。というのも、従来のホットメルト接着剤の材料にはゴムのような非常に柔らかい性質のものを使っており、ホットメルト接着剤自体も柔らかいのですが、植物系の材料は硬くて接着剤には向いていないんです。それをうまく柔らかい状態にする技術が難しかったですね。
▍早川:どう混ぜようかと考え続けて、その答えを見つけだしたことが、このイノベーションを生んだ要因だと思います。他の人が分析しても、おそらくわからないであろうオリジナルの製品が出来上がったと思います。

Q:ペットボトルのラベル用として開発した理由は何ですか。

▍早川:飲料メーカー各社がCO2 排出量の削減に取り組んでいることはもちろん、ペットボトルのラベルのコストダウンにも貢献できるからです。2011 年ぐらいまでは、シュリンクフィルムといって接着剤を使わずにボトル全体にボトルの形に合わせて熱で加工しているものが主流でしたが、材料や加工費のコストダウンが課題となっていました。接着剤を使用すれば、ラベルに使うフィルムの量も減り、コストダウンにつながるのですが、ペットボトルをリサイクルするためには、ラベルを剥がす必要があります。通常、ペットボトルのリサイクル業者は、ラベルをアルカリ水溶液で剥がしてから、ペットボトルをチップに加工しています。その際に、アルカリ水溶液で洗浄しやすい接着剤というプラスアルファの性能が要求されるようになったのです。
▍竹中:そこで、TECHNOMELT EM384では、バイオマス原料の配合によって非常に高いアルカリ分散率を実現しました。

植物系原料を66%含有にした時より25%含有を開発した方が大変だった

Q:2012 年に25%植物由来のホットメルト接着剤が完成して、その後2014 年には66%までに植物由来 の原料を増やすことに成功しました。

▍竹中:2014 年に66%に増やすことができたのは、25%の接着剤を完成させたときとは異なる植物系の材料を見つけたからです。日本の化学メーカーではバイオマスの材料を使う研究がかなり進んでいて、積極的に技術開発に取り組んでいらっしゃいます。
ただ、接着剤の分野ではまだ応用が進んでいません。今回、最大のポイントは、ホットメルト接着剤にも使える植物系の材料を探し出し、応用できたということです。しかし今振り返ると、植物系の原料の含有量を66%に増やした過程よりも25%含有の接着剤をゼロから開発した時のほうが、ずっと大変でした。

ニーズに応えるプラスアルファの性能を付加

Q: 今後、植物由来100%のホットメルト接着剤の開発は可能なのでしょうか。

▍早川:100%は難しいかもしれませんが、バイオマス含有量が80%以上というポリマーも開発されてきているので、そういうものを使えば90%ぐらいは可能だと思います。ただし、現状ではコストが高く、ユーザーが簡単に従来品と置き換えることはできません。ペットボトルではアルカリ洗浄性という新しいニーズに応える性能を付加できたように、バイオマスのフォーミュレーションに何かプラスアルファの特徴、しかもバイオマスでしかできない特徴を付加することで、用途拡大を目指したいと思っています。

Q:プラスアルファは何なのか、見えてきていますか。

▍竹中:市場のニーズを捉えつつ、プラスアルファを見つけ出すのに苦労しています。ただ、バイオマスプラスチックの国内の市場規模は、2010 年ぐらいに約1 万t だったものが、現在では5 万tに拡大していますし、大手企業は消費者に対する啓蒙活動に取り組んでいます。今後、消費者の環境意識が材料のバイオマスプラスチックから接着剤へも広がっていくと、需要は確実に高まるものと考えています。

工業用接着剤事業本部 製品開発本部

本部長(理学博士)
早川 正
今やるべきことは、バイオマスのホットメルト接着剤でしかできない切り口を探すこと。使う必要性を強く感じてもらえる開発を目指しています。

ARホットメルトプラットホーム

リサーチケミスト
竹中 真
化学者として新しいものや現象に触れることが仕事の喜びです。そして、それをグローバルに発信できることが日々のモチベーションになっています。

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