2015/09/07  東京

Innovation 最新コーティング 技術者ストーリー

エレクトロ セラミック コーティング(ECC)

ヘンケルでは毎年たくさんの製品を世界中の人に届けています。そんな新製品に関わる人々に、開発の裏側や込められた思いを聞く『イノベーション』。今回は、アドヒーシブテクノロジーズ部門ジェネラルインダストリー事業本部技術サービスグループのクー・テン・ホンさんに新金属表面処理技術「エレクトロ セラミック コーティング」についてお話を伺いました。

エレクトロ セラミック コーティング(ECC)とは

プラズマ電解析出法を使った、耐熱性・耐摩耗性・耐食性に優れた革新的なコーティング技術で、ヘンケルが日本を含め10カ所で特許を取得。過酷な状況下でもアルミニウムやチタンおよびそれらの合金など軽金属の使用を可能にします。船舶部品や車関係部品のほか、照明、空調機器、調理器具、アウトドア家具など産業分野全般のコンポーネントへの適用が期待されています。

ヘンケルが世界10カ国で特許を取得した、革新的コーティング技術

Q: 仕事の内容を教えてください。

クー:エレクトロ セラミック コーティング(ECC)という金属表面処理の技術を担当しています。ECCはまだ日本ではあまり知られていない技術です。お客様の依頼や要望の聞き取り、実際のサンプル処理や評価結果の分析だけでなく、営業担当者のようにお客様を訪問して技術について説明をすることもあります。ECCのラボは、米国とドイツ、中国(上海)にはありましたが、日本国内では私の勤務する横浜に2013年に完成し、ラボの管理もしています。

耐熱性、耐摩耗性、耐食性のどれを取っても、従来の技術よりも優れていることが、実験結果から証明

Q: ECCとはどんな技術なのですか。

クー:ヘンケルが日本を含む10カ国で特許を持っている、プラズマ電解析出法を使ったコーティング技術です。電気分解によって、コーティングを施したい金属の表面にプラズマを発生させ、厚さ5 〜 10ミクロンの酸化チタン皮膜を作ります。
 従来の技術に比べ、ECCは、品質、コストいずれの面でも多くの利点があります。ECCは耐熱性、耐摩耗性、耐食性のどれを取っても、従来の技術よりも優れていることが、実験結果からも証明されています。そして、皮膜の析出時間も数分ととても短いですし、ECCの上に直接塗装ができるので、製品を作る工程や時間も大幅に削減できるんです。
  ECCのコーティング技術は、船や自動車のエンジン部品や、草刈り機のような小型エンジンの部品のほか、空調機器や電子機器への適用が期待されています。同じエンジンでも、部品によって求められる機能は細かく分かれます。エンジン内部の部品なら他の部品と接触するので摩耗しにくいことが重視されるし、船に使われる場合は塩害に強いことや腐食しにくいことなどが重要になりますが、ECCはそれぞれの要求に応えられます。

Q: ECCは、なぜそんなに優れた特長を得られたのですか。

クー:大きな要素は、プラズマ電解析出法で作られた皮膜と基材との密着性が非常に高いことです。皮膜と基材のほんのわずかなすき間から、水分や塩分、空気が入り込むことで腐食が始まります。密着性が高いECCを使ったものでは、傷をつけ衝撃を与えた実験でも、皮膜がはがれたりひび割れたりはしませんでした。
 また、すでにあるアルマイト処理の場合、基材のアルミニウム自体が酸化して皮膜になるので、基材も削られてしまいます。プラズマ電解析出法は他の企業でも採用していますが、基材の上に皮膜が作られ、さらに強い化学結合で密着しているECCのようなコーティング技術は、他にはありません。

2016年中に量産ラインが完成! ECCが大きく伸びるのはこれから

Q: ヘンケルジャパンでは、ECCをどのようにお客様に提供しているんですか。

クー:ECCの場合、販売するのはヘンケルで手がけている接着剤やヘアケアのように「製品」ではなく「技術」になります。現在は、お客様がECCラインを自社で作り運営する方法と、ヘンケルでコーティングを受託する2種類のビジネスモデルを提案しています。どちらもすでに実績がありますが、受託拡大のために待ち望んでいた量産ラインが、2016年中に完成します。
 2009年にECCを日本で紹介し始めましたが、2013年にラボができるまでは、技術サポートやサンプル作りはずっとアメリカに依頼していました。「採用したいけれど量産はいつから可能なのか」とお客様にも繰り返し聞かれていました。ECCが大きく伸びるのはこれからです。

Q: どういった時にやりがいを感じますか。

クー:私たちは部品の加工を依頼されても、何に使われるのか分からないまま仕事をします。クライアントのところへ行って、機械の断面図を見たり、製品を見たりした時に、「ああ、実際はこんな風に組み込まれるのだ、自分たちはこの部分の処理を担当したのだ」と分かり、とてもうれしかったです。
 お客様としては、新しいアイディアとして考えている製品もありますから、その全体像について話すことはほとんどありません。こちらとしては、その部品が何に使われるものか、例えば周囲の部品との接触の仕方が分かれば、皮膜の表面の粗さ等で違う処理をして周囲とのなじみ方も変えられるのですが。サンプルを見てさらに条件の変更や調整を求められることは少なく、いわば一発勝負なので、分からない中でお客様が求めるものを提供するという緊張感はあります。

Q: ラボができたことで、こうした厳しい条件にも対応しやすくなりましたか。

クー:サンプルをお客様に見せるのに、アメリカへ送るため最短で2カ月かかっていた頃に比べれば、仕事はしやすくなりました。税関等の手続きなどにかかる時間や手間を省けるだけでなく、日本で処理ができれば細かな問い合わせなども速く解決できます。現在は最短で当日サンプルを渡せます。その分、排水や薬液の検査、サンプルの設定のようなラボの管理、責任も一手に引き受けるので仕事は増えましたが。それでも、まだ浸透していない、似たものもない技術は、無限大のビジネスチャンスがあるということなので、新しいことを考え、学べるのは一番いいと思っています。

まだ浸透していない、似たものもない技術は、無限大のビジネスチャンスがあるということ

Q:  ECCの今後の可能性を聞かせてください。

クー:身近なもので新しく発展しそうなのは、フライパンなどの調理器具です。使ううちに、テフロンコーティングが削れたりはがれたりした、という経験がある人は多いでしょう。ECCが得意とする基材との密着性が高ければ、へらなどでこすることにも耐久性を高くすることができます。メーカーから見ても、生産にかかる時間を大幅に短縮できます。現在の技術ではフライパン1つに1時間以上かかりますが、多くはテフロンコーティングをする前処理の時間です。ECCなら20分ほどまで短縮できるようになります。
また日本では現在アルミニウム加工がメインですが、将来的にはマグネシウムが大きく発展する可能性があると思っています。マグネシウムは、表面処理をした後のペイントがうまくできないというのが課題だったのですが、ECCではきれいに色が乗ります。これは他社にもできていないので期待できる分野です。

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Open Slideshow エレクトロ セラミック コーティングの使用例

エレクトロ セラミック コーティングの使用例

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アドヒーシブ テクノロジーズ部門 ジェネラルインダストリー事業本部

技術サービスグループ

クー・テン・ホン

(マレーシア出身)

この仕事の魅力は自分自身も製品の一部となれること。特に金属加工処理は、技術者の力が仕上がりに直接影響するので、気を使います。